データ分析プロセスを組織の中でどう役割分担したらいいのかを考えてみた

2018年8月24日

データ分析組織の中での役割分担

データ分析組織については理想のデータ分析組織とはどんな組織だろうか最悪のデータ分析組織とはを書いてみたが、ではその組織の中でどのような役割分担が考えられるか、についても考えてみたい。

話の基本となるのはデータ分析プロセスである。意思決定者と分析者はわかれているべきだが、データサイエンティスト・データアナリストが「何が問題か」を考えるべきではないが、そうも言っていられないのでどうすればよいのか考えたということもあるので意思決定者と分析者が同じ場合も考えてみる。

意思決定者と分析者が分かれていない場合

全部1人でやる

データ分析を始めたばかりの頃は人もいなければ高度なことをやる必要もない。というよりは経営者やマーケターが自分の意思決定のために自分で分析を行えば必然的に意思決定者と分析者が同一人物になる。

1人でやればコミュニケーションロスがなくなるメリットはあるが、データ分析者を置かないと中立性が云々など言う以前に作業量が多すぎて無理がある。洞察することに時間を割くこともできずに個人の感と経験への依存度が高くなってしまうためこの段階からは早々に抜け出す必要がある。

あるいは、小さな企業やプロダクトであればエンジニアが最初から最後まで担当することも考えられるが、その場合は役割分担を考える必要もないので今回は考慮しない。

情報・データ収集だけ誰かに任せる

1人で全部やるのはすぐに限界が来る。そこで作業の分担を考えるわけだが分析者の部分を全面的に任せられる人が身近にいるというわけでもないので、さしあたり情報収集部分だけを部下ないしは外部に依頼することになる。

これで少しは楽になるかもしれないが、作業レベルの仕事を任せたところで人も育たないし外注だとコストだけがかさみ続けるので、やはり分析ができる人を早々に探してくることになる。そこで、ここからは意思決定者と分析者が別れた場合について話をすすめよう。

意思決定者と分析者が分かれている場合

「分析」ができる人を探してくる

「分析」ができる人であればよいだろうと安直な考えで技術面だけを見ると、「技術はあるがコミュニケーションが取れないので使えない」というこれまたよくあるパターンに陥る。うまくマネジメントができれば技術者として結果は出せるだろうが、組織としては心もとない。

データ分析プロセスをマネジメントする人

データ分析組織に必要なのはデータサイエンティストではなくデータ分析プロセスをマネジメントする人である、というのが以前から主張していることだが、技術的には専門家に劣っても広くプロセスを動かせる人の方が組織は機能する。

最大の問題は「できる人がいない」。実務を行いながら育てていくことになるが、ほぼ未開のルートだ。

分析者内での役割分担

さらに分析者内での役割分担を考えよう。データ分析プロセスをマネジメントする人がいればよいが、いなくても分析者内での役割分担でうまくまわせるかもしれない。

データ分析プロセスを1人でやる

マネジメントはプロセス全体に目を光らせつつうまく回るかを管理する側だが、それとは違い実務者としてプロセスを1人でやる形。組織化する前にデータ分析者が独立して動けば結局全部やらざるを得ない。

とはいえ得手不得手はあるので、1人でプロセスを回せる人をそれぞれ独自に活動させるよりも組み合わせながら案件を担当させるのが理想だが、この役割でよい仕事をするためには幅広い経験が必要になるので、組織化するにあたっては人材の確保が課題となる。

情報・データ収集を分担

まず、情報・データ収集のみを完全に分業する方法が考えられる。情報・データ収集はそれ自体が大きなテーマであるが、

  • 組織の規模がそれなりの大きさがないと専任させる余裕がない
  • 分析経験がないと分析担当者とのコミュニケーションが取れない
  • 分析担当者や外部から評価されない

ということもあるのだろうが、データ分析組織内の役割として確立はしておらず、スキルの低い人に任せる雑用扱いであろう(それはそれで間違いだと思う)。当面は専門職とは確立せずに、きちんとマネジメントができる前提で外注を利用しつつ、人材育成する際には分析だけでなくこの情報・データ収集も経験させる、という形になるのではないか。

誰かに任せる場合は、情報収集に限らず誰かに丸投げするのは論外であるので考えないとして、以下の2点を注意したい。1つは、知識と経験が少ない人に任せる場合には明確な指示を与えるか、決まった情報源からのルーチンワークのみにすることである。これは情報・データ収集ではどのような情報に価値があるかを判断するためには知識と経験、いわゆる土地勘が必要で、新入社員にとりあえず任せるというような仕事ではないためである。

もう1つは、力関係があるとどうしても分析者の意向に沿うような情報収集を行うことになるため、そうならないように申し渡しておくこと。ただし、言われる側は「そんな事言ってるけど実際に自分の気に食わない情報を上げたら怒るでしょ」と思っているので、本当の信頼関係の構築がされるまでは「明確な指示を与えるか、決まった情報源からのルーチンワークのみ」と手を借りることを中心にして、分析者側で気を付けることにしておいた方が無難だろう。

情報・データ収集と前処理を分担

情報・データ収集を分担する場合との違いは前処理を含むかどうかであるが、実質としては前処理担当で情報・データ収集は付属的なものにならざるを得ない。

分析の経験がなければ前処理を行う技術はあってもどのように処理をするかについて分析担当者とのコミュニケーションが取れなくなってパフォーマンスが悪化するのは収集の比ではなく、分析担当者の指示に基づいて処理するだけならば単なる作業者となってしまうので、もしこの役割を作るならば分析経験者を当てるのがよい。

分析経験のある特定の個人の間で分担すればより良いパフォーマンスが期待できるだろうが、この役割を完全に分業してしまうと、今度は人材育成の面で収集と前処理だけしか出来ない人になってしまいかねないので長期的に考えるとうまくいかないかもしれない。

もし組織からこの役割を提案された場合、将来のキャリアの選択幅が大きく狭まる危険もあるため、部分的にでも分析に参加できるようにするか、それが許されなければ自分で勉強して転職できるようにしておく、というプランは必要だろう。収集や前処理を正当に評価できる企業はさほど多くない。

コミュニケーションの専門家

まとめてしまったが意思決定者の要求を聞いて内容や納期といった期待値コントロールをするのと、分析結果を伝えるプレゼン能力は別。分析者にはこのあたりが得意でない人が多いためこの分担は機能しやすいが、人間関係が悪いとうまくいかない。

分析はわからないけれどもマネジメントになってやることがない、一応分析は知っているけれども手を動かしたくないが仕事をしているふりをしたい、と仕事を作るために間に入り込もうとする人がいる時もこうなりやすい。そういう人は分析者を見下したり偉い人に阿るために都合の良い分析を出させようとする傾向が強いようで、メンバーがこれをやりだしたら即座にやめさせるべきだ。組織のマネージャー自身がこれを良しとするならそのデータ分析組織に先はない。

マーケター

意思決定者と分析者が分かれているが、分析者と実行者が同じ。何かの課題に基づいて原因を分析し、施策を考えて提案してそれが通れば提案した本人が実行する。つまりはマーケター全般がここに当てはまるだろう。

機械学習エンジニアはシステムへの実装への関与がつまりは施策の実行でもあるため、マーケターに分類するのが良いと考えられる(プロダクトの意思決定に関わっている場合は最初の「意思決定者と分析者が分かれていない場合」に該当するので除外)。

現在のところ「分析」といえば、この「マーケター」と「全部1人でやる」が大半になるだろう。企業の規模がそれなりにあれば前者、そうでなければ後者になる。言い換えると「意思決定者と分析者が分かれている場合」は圧倒的に少ないということでもあり、100%ではないにしても「マーケター」と「全部1人でやる」のいずれかができないと厳しいのは間違いない。

完全な分業は難しいが、将来どうなるかは未知数

自分の立ち位置をどう説明するか、という視点で考え始めたがやはり全体像を考える必要があったのでいくつかのケースについて検討したが、やはり完全に分業するというのはなかなか難しい。実際には小規模の組織の中でいくつかの領域をまたぎながら主業務8割それ以外2割、といった配分で相互に絡み合うのが多いが、組織が大きくなってもっと明確な分業をするほうがよいのかは未知数だ。

根拠があるわけではないが、

  • 1割のデータ分析プロセスをマネジメントする人
  • 7割のデータ分析プロセスを1人でやる人
  • 2割の情報・データ収集を分担する人

がお互いを尊重しながら力を発揮したら素晴らしいデータ分析組織になったりするのかな、なんて妄想している。