書評・感想『敗北の理由 日本軍エリートはなぜ迷走したのか』

この本と『大本営参謀の情報戦記』を読んで絶望しない人だけがデータサイエンティスト・データアナリストを目指すべき

日本の情報軽視についてはたびたび触れているが、この書籍でも情報軽視によってどれだけの失敗が繰り広げられたかが延々と記述される。さらに加えてアメリカ側との違いをまざまざと見せつけられ、正直なところ読んでいてうんざりする。

情報無視の上層部、自分の願望で物事を考える司令官や作戦部の参謀、事実を報告してはののしられたり脅される情報担当者、外国の政権に近づきすぎていいように操られる外交官とよくもまあここまで失敗するものだという話が延々と続く。たまに成功例が出てくるがそれは相変わらず特定個人の頑張りであり、それが組織として生きることはない。

国家の命運をかけた総力戦だというのに情報を扱う部署は小さく、しかもまともに相手にされない。戦時中大和田通信隊の責任者である森川大佐の述懐では

「海軍で通信部門へ行くのは、たいてい出世街道からはずれた士官ばかりだった。なかでも暗号解読などを担当する特務班は俺のように若い時、結核をやった傍流中の傍流の来るところだった。電波で戦がやれるかと海軍の主流の連中は思っていたようだが、負ける時になって初めて、上層部は特務班のいうことを真剣に聞き出したよ」

敗北の理由 日本軍エリートはなぜ迷走したのか P114

というのだからどうにもならない。これは陸軍でも同じだったようで『情報なき戦争指導』にも似たような話が出てくる。

悲しいことにこれが現実であり、数十年後の現代においてもビジネスの世界に話を持ち込めばそのままあてはまる。ということは、(アナリストとしての)データサイエンティスト・データアナリストといった、意思決定のためのデータ分析職に特に日本企業でなろうとした場合にはこの「国のトップから一般人までの徹底的な情報軽視」という文化と戦うことが前提となる。

転職サイトには書いていないし、面接でも教えてくれないが、データ分析がうまくいかない理由の最たる理由はこの情報を軽視する文化であり、長期間にわたって培われてきた文化がそう簡単に変わるわけもない。

興味であれ使命感であれ、この現実と立ち向かう理由や覚悟がなければ早々に絶望して挫折するだけなので、本書と『大本営参謀の情報戦記』を読まずして「他の誰かの意思決定を支えるためのデータ分析を行う」データサイエンティスト・データアナリストを目指すのは非常にリスクが高い、ということははっきりと伝えておこう。

もちろん企業によって状況は異なり、データ分析を重要視している企業もある。しかし社会全体を見渡せば圧倒的な少数派であるし、今までほとんど存在しない上に評価もされづらい。データ分析を主業務とした人が出世した話を寡聞にして聞かない。

2冊買っても今なら中古で1,000円そこら。読まないで失敗した時のことを考えたら費用対効果は抜群だ。手元に置いておきたい本である。