現場を無視したシステムやツールはなぜ失敗するのか

料理人を無視してオーナーと内装業者が作ったキッチンが使えるか?

CRM・BI・DMP・DWH・マーケティングオートメーションにWeb解析、その他分析のためのシステムやツールは様々あるが、「導入したが誰にも使われず毎月金だけがかかる」という声は後を絶たない。そして、この声を発しているのは現場ではない。現場の声は「それみたことか」である。使い手を無視して知らないところで話を進め、ある突然「導入を決定しました」と通達が来るような話は最初から無駄になることはこの時点で確定している。

どういうわけかシステムやツールの導入を主導する人達(経営者やシステム関連)は、コンサルやベンダーと話はしても、ツールが導入された際にそれを実際に使う現場は一切無視して話を進めるというのが当たり前のようで、現場が何を求めているか、何に困っているかをきちんと把握しているケースはまれである。

これは、「料理人を無視してオーナーと内装業者が作ったキッチンが使えるか?」という問題を考えればわかるように、よほど現場に精通した人がその中にいない限りうまくいくわけがないのである。ここでは現場を無視したツールやシステムがいかにダメであるか、そして使えるツールやシステムを作るためにはどうするかについて、を使う人(主に現場)・作る人(エンジニア)・決める人(経営者・マネージャー)に分けて考えてみる。

使う人を無視したツールやシステムがダメな理由その1・決める人が丸投げする

経営者・マネージャーはツールやシステムの概要は理解していても使う際にどうであるかということに興味はないし、あるべきでもない。事細かに介入してくるようならそれはそれで不安になるが、興味がないというのは別の問題を惹起する。つまりは、ベンダーやエンジニアへの丸投げである。

ベンダーやエンジニアはそれぞれの立場があり、自分達に有利なように話を進めたがるのは当然であるが、作る人の視点だけで使う人の視点が存在しなければ失敗は約束されたようなものだ。

使う人を無視したツールやシステムがダメな理由その2・作る人はその場を乗り切ればよい

業務に乗っ取らずに配置されたボタンが使いづらい、色分けやアイコンがわかりづらい、1度ボタンを押せば終わるのではなく数分に1回1つの作業が終わったらまた別の場所をクリックしなければならずめんどくさいなど、怨嗟の声はよく聞こえる。これは作る人はその場を乗り切ればよいので、その時面倒な作業であっても乗り切ればよいとそのまま放置したりするためである。

そのツールを使う人は、できるだけ早い段階で介入しなければならない。知らないところでプロジェクトが進んでいることがあるが、とにかくも気づいた時点からでもやらないよりはましだ。

使う人を無視したツールやシステムがダメな理由その3・使いながらの修正に対応する準備がない

ツールやシステムは使えば使うほど改善点・問題点が浮き彫りになる。実際に触れもせずに頭だけで考えて出てくることなどたかがしれており、事前に想定されただけで済むことはない。ところが実際には、そして1度完成となってしまえば追加で修正するにも金も時間もかかる上、作った当人はすでに他のプロジェクトで動いておりこちらに手が回せず、結果放置という事態になる。

対応できなければ作業の効率が落ち、使う人のやる気を失わせることになる。もし何も意見が出なかった場合は、不満があるが言えない雰囲気が社内にあるか、改善などまったく考えずに作業だけ行っているレベルの人材か、使っているようなフリはしても実はほとんど使われていない、といったことを疑うべきである。完璧なツールなど存在しないのだから。

使う人を無視したツールやシステムがダメな理由その4・実務上の運用を理解しているのは使う人だけ

作る人も理解しているのでは?と思うかもしれない。しかし、作る人は「正しく使えば問題なく動く」という視点しかないため、実務上に発生する細かいトラブルを想定していない、あるいは使い手に丸投げすることが多い。だから業務フローを一切無視して作ったり、ファイル形式や文字コードなどに勝手に制約を付けて使う人に合わせるように要求してくるが、これは後々協力会社やクライアントを巻き込んでの大混乱を招く。これも一度作られてしまうと後の修正がしづらいので、外部にも影響があることを全面に押し出して(内部の意見だと無視されかねない)抵抗しなければならない。

使う人を無視したツールやシステムがダメな理由その5・押し付けられれば反発する

当たり前の話だが、自分の知らないところで決められてある日突然「このツールを使え」と言われれば誰だって反発するだろう。ましてや、それが使いづらかったりしたら最悪である。さらに深刻なことにはこのようなやり方は信用の喪失と、士気の低下という直接には見えなくとも本質的に重大な影響を及ぼす。

失敗を避けるにはいきなり作るのではなく、excelでいいから今すぐ始める

大がかりなシステムになればなるほど、仕様を決めたり調整を行い、そこから実際の構築とテストになって・・・と数か月どころでない時間が掛る。しかし業務はその間にも続いているのであり、何もしないのは無駄の垂れ流しや機会損失を招く。

システムやツールを導入しようとしているのであるから、何等かの目的はあるはずである。であれば、excelでも何でもいいからとにかく手元にある道具やすぐ手に入るフリーのツールを使ってPDCAを始めるべきだ。実は問題の多くは余計なシステムやツールは不要であるということに気が付くだろう。また、実際に手を動かすことで現状のツールでは物足りない点、あるいはどうしても必要だができないことなどが明確になる。その時になってから導入の検討を始めても遅くはない。むしろ、いきなりシステムやツールを作るより遠回りに見えても近道である。

目的無きデータ分析は無駄である。無駄なことをやるためのシステムやツールなど、無駄の上にさらに無駄であり、もし「何のためのシステムなのか?」に答えられないのであれば、即座にやめるべきだ。