パーソナライズで何が起きているかを知り、どうするべきかを自分で選択する

中身を知って、自分で選ぼう

データ分析の高度化というより主にデータ処理能力の大幅な向上だと思うが、これから先もパーソナライズはより精度を高め、かつ様々なところに応用が広がっていくことは間違いない。

とはいえ所詮は人が作った仕組みなので当然良いところもあれば悪いところもある。だからユーザーとして何が起きているかを知り、どうするべきかを自分で選択する知識を持つことでうまく付き合うようにしたい。

パーソナライズことは居酒屋のおすすめの自動化

よく通っている居酒屋であれば、好みの酒や食べ物を顔見知りの店員がお勧めしてくれる。たくさん通っているほど好みの情報を多く把握しているからより適切なお勧めをしてくれる可能性は高くなる。

パーソナライズはこの仕組みをアルゴリズムによる推測とシステムによる自動化で、そのWebサイトを利用するあらゆる人のあらゆる分野に適用する試みだ。

全ての人のすべての好みに合うわけでもないので精度が悪ければおかしな推薦をしてくることもあるが、全体に対して自動で行われることで効率化を行っている。

では、パーソナライズがどう影響しているのだろうか。

興味のある情報に出会いやすくなる VS 似たような繋がりからしか情報が得られない

動画サイトを例にとろう。パーソナライズでよく言われるのは、「興味のある情報に出会いやすくなる」だ。たしかに、猫動画をよく見ているときに気が滅入る政治ネタを見せられるよりも子犬がたくさんわちゃわちゃしているだけの動画をお勧めしてくれる方がうれしい。

過去の履歴に基づいて自分が気に入りそうな情報を提供してくれることで興味のある記事や商品に出会いやすくなるのでたしかにこれは便利だ。

ところが、猫動画ならさして問題はないだろうが、これが思想や政治的な問題となると話が変わる。対立する意見や反論が一切見られないどころか存在することにすら気が付かないとしたらどうだろう。

過去の履歴に基づいて、似たような繋がりからしか情報が得られないことが知らず知らずのうちに行われているかもしれないのだ。

購入履歴以外も使われる

購入履歴だけではない。年齢がわかれば入学・就職、居住地がわかれば近くのイベント、職業がわかれば年収もある程度予測できるので高額商品などなど実はパーソナライズに使われるデータは多い。

会員登録の際に入力されている情報は当然パーソナライズに使われている。これに購入履歴組み合わさり、さらにデモグラに合わせた特徴の外部データを取り込んで・・・とり精度は高まっていく。

そのうち個々人のライフスタイルに合わせて1日中その人に合わせたお勧めが飛んでくるのだろう。まるでストーカーのように。

パーソナライズの違う見方

少々煽ってみたが、また少し視点を変えてみよう。アップセルやクロスセルは「過去の購買履歴に基づいて、さらに買ってもらえそうな商品をお勧めする」が、これが違法だとか非倫理的だという人はまずいないだろう。

パーソナライズも同じだ。過去の履歴に基づいて興味を持ちやすい商品を勧めることでつまりは動画サイトの収益に繋がる。つまりはアップセルやクロスセルと話は同じである。

そう考えれば、さほど気にするような話ではない。気に入らなければ無視すればいいのだから。

自分が「知らないことを知らない」ことを提供されるのは是か非か

しばらく前に合った話。商品の購入履歴から妊娠が予測されたので、子供服がお勧めされたが当人は妊娠を知らなかった、ということがあった。出展を見つけられなかったのでちょっと話が違うかもしれない。

これだけ読むと「なんか気持ち悪い」と思うだろう。しかし、これも使われる対象が変わると印象がかなり違う。

Amazonの「この商品を買った人はこんな商品も買っています」は有名だが、これが便利なのは自分がまったく知らない本の存在も教えてくれることだ。他の人の購入履歴が使われているので、最初に購入した本と一見まったく関係なさそうな本が出てくることがある。

共通しているのは自分が「知らないことを知らない」ことであり、それが是か非かはあまり意味がない。動画の話でいう政治VS子犬と同じで、使われ方次第ということだ。

パーソナライズがなかったら

もし過去の履歴に基づくパーソナライズが存在しなかったら何が起きるか。ぱっと思いつくのは上位ランキングであろう。どの商品、どの動画を見てもいつも同じ上位ランキングが出てくることを考えると、あまり面白みはなさそうだ。

よほど重要なことや知りたいことでもない限り、自分が欲しいと思ったものを毎回検索するなんてめんどくさい。なので無くなると困る。

パーソナライズは禁止できるか

パーソナライズは気持ち悪い!知る権利を侵害している!!だから一切禁止すべきだ!!!。というのはあまりに暴論で賛成できないが、パーソナライズが収益のために行われていることは間違いないし、悪いことでもない。

また、反対することにも反対する理由はないが、いくつかの理由でパーソナライズの完全な禁止は実現はしないと考える。

まず、パーソナライズの禁止というのは居酒屋の店員が良くてアルゴリズムがダメであるという話は通らないので、「全て」のパーソナライズを禁止するかどうかになるが、そんなことができるわけがない。

2つ目に、それでも人とアルゴリズムは違うからとネット上だけを禁止するとして、その場合はあらゆるサイトで一斉に禁止しなければいけない。それも日本だけでなく世界レベルでなければ日本企業だけが一人負けするという事態になる。

3つ目、コストの負担を誰がするのか。パーソナライズによる利益の増加分をユーザーが負担することになるが、それでいいのか。

と、法律うんぬんのド素人でも禁止は無理そうだという結論になるわけで、そうなればパーソナライズで何が起きているかを知り、どうするべきかを自分で選択するのが良い方法だろう。

パーソライズとどう向き合うか

プライバシー問題もあるので10年先はどうなっているかわからないが、さしあたりは「パーソナライズが行われていることを知っておく」こと、「パーソナライズによって見えなくなっている情報・データがあるかもしれないと気を付ける」ことの2つは意識しておきたい。

特に後半の場合、政治や企業や個人の評判など最初に見た情報に引っ張られて偏った話だけが入ってくる状態になっていることに気づかないのは非常に危険だ。異論反論を自分で積極的に探しに行くようにしよう。

今回は情報・データを選別するためにユーザーの視点で書いたが、その理由は作り手のための技術的な話はあっても受け取る側向けの話があまり見当たらなかったからだ。

所詮道具なのでうまく使えばよいのではあるが、使い方を誰も教えなければうまく使えるようにはなれない。その役割は作り手側にも担う責任はあってしかるべきかと思うのだが、難しいのだろうか。

それとも自分が知らないだけかもしれない。こういう文章を書いて投げたら「こういう話もあるよ」と様々な意見を返してくれるのならパーソナライズも大歓迎だ。