「じゃんけん大会優勝者が語るじゃんけん必勝法」に気を付けよう・・・情報・データを選別する(4)

2018年10月25日

それは必然なのか偶然なのか

1万人でトーナメントのじゃんけん大会をしたら最終的には勝者が決まる。では、その優勝者が語る「じゃんけん必勝法」はどこまで信じることができるだろうか。

同様に、「成功した人が語る経営論」や「人気者の人生論」はどの程度が真実でどの程度が運だったのだろうか。

検証もされていない誰かの経験談を、自分が正しいと思っていることを「成功した」人が言っているからやはり正しいのだと追認するために使っているだけで害悪になってはいないか。

どうしたら、自説に捕らわれ凝り固まらないようにできるのだろう。

選択バイアスとは

先に選択バイアスについて。下の絵を見てほしい。

第二次世界大戦で帰還した爆撃機が機体のどの部分にダメージを受けていたかを示すしるしだ。
(中略)
統計学者、エイブラハム・ウォールドは、ダメージの”ない”部分を強化するように忠告した。データを収集することができたのは、帰還した爆撃機だけであり、ドットがない部分を攻撃された機体は帰還できなかったということだからだ。

『要点で学ぶ、デザインの法則150』 P255

ドットがない部分というのはつまりはコックピットと翼の付け根であり、戻ってきた機体にはその部分にダメージがなかった。

言い換えればドットがついていた部分は攻撃されても帰還できる可能性があるが、重要な部分は攻撃されると帰還できなかったということになる。

『要点で学ぶ、デザインの法則150』には書かれていなかったが、弱点の部分を強化することで帰還率が大幅に上がった、という続きの話も聞いた記憶がある(出展を忘れたので本当かどうかは確かめていないが、納得のいく話ではある)。

ここから得られる教訓は、「生き残った人の話だけを聞いて判断すると間違えるかもしれない」ということだ。これを選択バイアスという。

本当に致命的な失敗談は語られない

成功した人の失敗談が上記のダメージを受けた場所だと考えれば、「ドットのつかない場所=本当に致命的な失敗談」ということだ。

だから成功した人の話の中には致命的な失敗は出てこない。あるいは致命的な失敗など存在しないのかもしれない。でもそれは成功した人の話だけを聞いてもわからない。

「今」成功している人の声だけしか聞こえない

さらに、その時成功している人の声しか聞こえないので、失敗した人はもちろんのこと、成功したように見えても長続きできない人もいる。

5年10年、あるいはもっと長い目で見なければ本当に成功したかどうかを知ることはできない。目先のことだけにとらわれてはいけない。

成功確率が1割なくても一発勝負ならわからない

まだある。絶対にうまく行く方法などなく、すべては確率である。8割成功することが予測されるのであれば相当な精度であるが、それでも2割は失敗する。

何度も繰り返せばその差は歴然となるが、2割も成功しなくても一発勝負ならば十分に成功する可能性はある。

その2割の人だけが目立っているのであれば、同じ方法では2割しか成功しない。本当は8割うまく行く方法があるにも関わらずだ。

できることはなんだろう

理想的には選択バイアスに気を付けて、成功した人の話の背景まで含めて事例を多く集め、長期的な目線で確率的に比較検討する、ということになろう。

ところが、選択バイアスに気を付けると言っても見えない物を見ようとするのは相当な労力だし、背景を探ることなど簡単にできる話ではない。

長期的な目線と確率的な検討ならできそうだが、集めた事例が成功例とポジショントークばかりではいくら数を集めたところで参考程度にしかならない。

となれば現実的には「真に受けるのは問題がある、ということを知っている」かが大きな分かれ目だろう。簡単に言えば「話半分に聞いておけ」。

あとは実際に話を聞いたり読んだりする時に「ちょっと待てよ」と思えればそれだけでも大分違うはずだが、それを忘れてしまうのが困りものだ。