「カスタマーサクセス」=「顧客の成功」のことではないが、だとしたら何なのか・・・情報・データを選別する(10)

2018年11月22日

「カスタマーサクセス」=「顧客の成功」ではないらしい

知らぬ間に「カスタマーサクセス」広まっていたのだが、どうもいまいち何を指しているかわからなかったので『カスタマーサクセス――サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則』を読んでみたところ様子が少し見えて来た。

少なくとも、この書籍でいわれていた「カスタマーサクセス」は、離脱を防いで収益を上げる「顧客維持戦略」のことを指している。それを「顧客の成功」という漠然とした言葉に直訳してしまったのがよくなかった。

つまり、特別な意味を持たない以前から存在する「顧客の成功」と、最近言われ始めた「顧客維持戦略」を指す話がごちゃ混ぜになっているのがどうやら混乱の原因らしい。

「カスタマーサクセス」は「データサイエンティスト」と同じ道

「顧客維持戦略」の意味での「カスタマーサクセス」はマーケティング領域の話、「データサイエンティスト」は分析とかエンジニアの話なので全然関係なさそうだが、「何をしているのかわからなくなった流れ」がどうやら似ている。

「データサイエンティスト」の場合、データ分析の文化があるところにテクノロジーの進化が起きたことで「高度化+デジタル特化」の専門家としてデータサイエンティストが現れたが、日本では過去の文脈を無視して言葉だけを輸入したことで極端になると「Excelができればデータサイエンティスト」のような混乱が起き、未だに収まるどころか人工知能ブームも相まってますます混迷を極めている。

「カスタマーサクセス」も同様で、顧客が力を得たことでサブスクリプションモデルへのシフトが進み、気に入られなければ継続されずにすぐにサービスを止めてしまうのでなんとかしなければならない。そのためには顧客の成功(つまりカスタマーサクセス)が必要だ、という流れがあった。

これも前段をすっ飛ばして「顧客の成功」という以前から存在する言葉だけ使うから何がなんだかさっぱりわからない。わからないけど「カスタマーサクセス」とか「顧客の成功」は聞こえが良いので、「顧客維持戦略」という意味が消滅して「顧客の成功」という曖昧な言葉だけが今後も広まっていく可能性はある。というか元に戻るの方が正しいか。

「カスタマーサクセス」とは具体的にどういうことかを聞こう

もはやみんなで統一しようとしても無理なので、その都度「カスタマーサクセス」とは具体的にどういうことかを聞くしかない。返答としては多分3パターンあるだろう。

  • 「顧客維持戦略」のことを指している
  • 独自に定義しているが具体的な施策がある
  • 「お客様の成功のためにがんばります」としか言っていない

求人情報を眺めているとわりと3番目が目に付くのは特別な言葉ではないので仕方ない。もし「顧客維持戦略」をやるつもりだったのに3番目の会社に入ったりしたら大惨事になるので気を付けよう。

「カスタマーサクセス」と「グロースハック」は何が違うのか

ついでに、似たような感じの言葉である「グロースハック」との違いも考えてみたい。

グロースハックの役割の1つに「維持」があり、これはカスタマーサクセスと被っている(参考:グロースハックの8つの役割とは)と考えられるが、グロースハックはプロダクトを盛り上げる志向の方が強い。

なのでスポーツに例えると「高速PDCAでプロダクトを成長させる」オフェンスがグロースハック、「顧客維持と定期的収益を増加させる」ディフェンスがカスタマーサクセスという整理はできそうだ。

「カスタマーサクセス」の核になるはずの「データ分析」はどこに行った?

「顧客維持戦略」の「カスタマーサクセス」では「データ分析」が核になる、はずなのだがどうも無視されているらしい。これもざっと見ていると要求されることが多いスキルは営業とかコンサルティングで、分析は無視されているかおまけ程度にしか出てこない。

これは「顧客維持戦略」の意味で使っている場合でも大差ないようだ。もともとデータ分析自体が行われていないのだから「顧客維持」になったらいきなり出てくるということもないだろうから当然だろう。だとしたら、既存のマーケティングと何か違うのだろうか?

「カスタマーサクセス」なんてなくなればいいのに

「顧客維持戦略」ならそう言えばいいし、「お客様の成功のためにがんばります」なんて当たり前すぎて意味がない。そうなると「カスタマーサクセス」なんて使わなくてもよいのでは、という気もする。

けれどももう広く使われているので、あとは振り回されないように注意して言葉の定義をきちんと確認することぐらいしかできない。面倒だから「カスタマーサクセス」なんてなくなればいいのに。

あるいは言葉の定義を確認する人が増えれば言っている側ももっとふさわしい言葉に変えてくれるかもしれないので、こういう投げかけはもっとしていこう。