「アナリティクスディレクター」とは「データ分析プロセスのマネジメントを行い、様々な部署や人とのつなぎ役となる役割」である

2018年12月2日

「データ分析プロセスのマネジメントを行い、様々な部署や人とのつなぎ役となる役割」のことを「アナリティクスディレクター」と名付けよう

データ分析とは「何を知りたいのか」という目的の決定から始まり、データの収集と分析を経て、意思決定と施策の実行が行われ、結果のフィードバックされることで終わる一連のプロセスである(参考:データ分析プロセスの概要)。

そのプロセスに参加する全員がこのプロセスを理解しているかどうかが分析を成功させる大きな要因となるが、たとえ全員が知っていたとしても誰かが適切に仕切らなければうまく動かないし、その役目は意思決定者側ではなく分析者側が担うべきだ。

同時に必要になるのが意思決定者やエンジニア、さらには外部の人々など役割もスキルも様々な部署や人との「つなぎ役」となることであり、この重要性は実務経験者であれば必ず実感していることだろう。

この「つなぎ役」はプロセスを動かす時だけでなく、ニーズのくみ取りやデータ収集のための仕組みづくり、システム化のための実装、データ分析文化の醸成や日常からの関係作りと会社のデータ分析を成功させるためのあらゆる活動に関わる役目でもある。

そこで「データ分析プロセスのマネジメントを行い、その円滑な運用のために様々な部署や人とのつなぎ役となる」役割を「アナリティクスディレクター」と命名し、その役割について概要をまとめた。

この役割は特別に新しいものではない。1人でデータ分析で行っているのであれば実は多かれ少なかれこの役割も同時に行っている。

しかしこの役割はその重要さに比べて目立たないせいもあろうが、なぜか名前もつかないほど明確に語られることがなかった。データ分析の広まりが進むにつれて会社が組織としてデータ分析を成功させるために最重要となるであろうこの「アナリティクスディレクター」の役割をどのように社内外にアピールし、広めていくかは大きな課題の1つである。

まずは、アナリティクスディレクターの概要から始めよう。

アナリティクスディレクターとは

アナリティクスディレクターの役割の中心となるのはデータ分析プロセスをマネジメントすることだ。より正確には「データ分析プロセスの全体像を関係者全員の共通言語として進捗をマネジメントする」と表現するのがよいだろう。では、そのために何が必要だろうか。

データ分析がプロセスであることを知らなければマネジメントしようがないので自身がデータ分析プロセスについて詳しく知っておくことは必須となる。ただし、プロセスであることを知っていてもそれだけではうまくいかない。各フェーズにはまた多くの個別の問題があるからだ。

そしてそのプロセスを与えられたリソースの中で誰がどこをどれだけ分担するのかを決めるのもアナリティクスディレクターだ。分析者も含めて1人で行わなければならない場合もあれば、余計なことはしたくない専門家、言われたことしかできないアナリストと言う名のオペレーターなどスキルも考え方も違う人とチームを組んで要求に答えなくてはならない。

また、データ分析がプロセスであることはアナリティクスディレクターだけでなく分析に関わる全ての人が知っておくべきで、そうでないと分析と言う名の数字いじりに夢中になったり様々な弊害がある(参考:データ分析がプロセスであることを意識しないと見えないこと)。まったくこのことを知らない人をマネジメントしようにもできないので、データ分析がプロセスであることの周知も最初に行う。

しかし要求が発生してから話し始めても遅い。したがって事前に理解を広めておく必要がある。それも分析者だけでなく意思決定者も含めてであり、つまりは社内の全員が対象である。

プロセスを周知する以外にも、意思決定者として要求を出してくる経営者から営業、システム面で協力を依頼することになるエンジニア、あるいは外部の協力企業まで社内外の実に様々な立場や役割の人々との関わることになる。

ここから、アナリティクスディレクターは「つなぎ役」としてのコミュニケーションと、社内にデータ分析による意思決定の文化の醸成にも関りを持たなければならないということもわかる。そこまでしなければならないのか、と思う気持ちは理解できるが、やらなければアナリティクスディレクター自身に何倍もの厄災となって降りかかってくるのでやらざるを得ない。

つまりは、アナリティクスディレクターとはデータ分析の、つまりは意思決定の「要」となるべき存在だ。役割は非常に広い範囲に及ぶため、1人で全てを行うことは到底不可能であり、アナリティクスディレクターチームとしての活動が期待されることになるだろうが、それはまだ当分先の話だ。

それでは、アナリティクスディレクターの役割について説明する。

アナリティクスディレクターの役割(1)プロセスの各フェーズにおける問題に対処する

誰かから「こういったことが知りたい」という要求が来てから「何を知るべきか」を考え、情報・データを収集して分析・洞察し、結果を伝達する、という一連のプロセスがうまく行くようする、と言うだけなら楽だがそんな簡単に実行できる話ではない。

データ分析プロセスにおける個別の問題は全部上げたらきりがないので、分析者側の役割を大きく3つに分けてアナリティクスディレクターの役割を考える。個別の議論に興味があればデータ分析について考えたことのまとめを参照のこと。

意思決定者からの要求を正しく理解し、期待値コントロールを行う

意思決定者からの要求は多種多様で、データ分析に対するリテラシーも人によって大分違う(大半の人はほとんどないか全くない)。そういった人からの要求をまず正しく理解することからアナリティクスディレクターの仕事が始まる。

ここで成し遂げたいことは相手が過度または過小な期待を持たないようにコントロールしながら「いつまでに、何をするか」をすり合わせることだ。

もちろんこの段階で内容や納期を完璧に決められることは少ない。なので大まかに決めて次のフェーズに着手してからまた戻ってきて再調整する、と言う流れの方が自然である。最初から決めようとすることも、最初に決めたことを遵守しようとして無理をするのも避けるべきだ。

「わが社はこの事業に投資すべきか?」とか「あのキャンペーンがうまくいったと言える数字が欲しい」という要求自体がおかしな場合はこの時点できっちり対処しないと炎上したり責任を全て押し付けられることになるため再考を促し時には拒絶することも必要だが、アナリティクスディレクターの権限ではどんなデタラメな要求でも受けざるを得ないこともある。これは会社がふさわしい権限を与えるべきか、という話になるがデータ分析組織運営の話になるので別の機会にしよう。

さらに意思決定者が外部のクライアントでかつ立場が非常に強いと面倒になるし、そこにコンサルタントや営業が間にはいるとさらに話がややこしくなる。一番最悪なのは「もうクライアントと決めてしまった」であり、覆すのは容易ではない。

この要求に対する期待値コントロールについて、「今までうまくいかなかったのはアナリティクスディレクターがいないことが問題であるとの認識」がされるのであればそれだけでも名前を付けた価値がある。それぐらい重要かつ難易度が高い。

収集・分析・洞察の妥当性を担保する

情報・データを取集し、前処理して分析し、洞察を行う、というのはつまり世の中でいう「分析」であるが、アナリティクスディレクターが気にすべきは「分析の妥当性をいかに担保するか」だ。

自分1人で全てやる場合はともかく、この部分を誰か別の人が担当する際には方法や結果をどう解釈するかで見解が分かれた場合、最終的に誰が決めるのかということについては

  • アナリティクスディレクターと分析者は役割の違いであるが一方に決定権を持たせるべきか
  • より上位者、つまりデータ分析組織のリーダーのジャッジに任せるか
  • ただしそのジャッジができるだけの知識があることが前提なので成立するのか疑問
  • 解釈が分かれた場合は両論併記すべきか
  • 手法はアナリティクスディレクターが理解できるレベルにとどめるべきか

など論点はいろいろあり、どうするのが良いかはこれから議論していくことになる。

意思決定者に結果を正確かつうまく伝える

結果を正しく伝えるために、伝え方も相手によって変える。

  • 言葉で説明すればよいか、資料を作成するか
  • 概略のみでよいか、詳細な説明を要求する人か
  • 分析手法に対する知識はどうか
  • 要求に対する結果でよいか、提案も出さなければならないか
  • 不都合な結果をそのまま伝えても大丈夫か

好みもあれば知識差もあるのでこれはヒアリングを行ったり、フィードバックをもらいながら修正していく。

特に不都合なことを伝える際には、人間関係ができておりそのような報告をして問題ないかどうか(回りくどいが、要するに仲良しか)まで見越しておかないと、不機嫌になったり時には逆恨みされて後の仕事に支障をきたす危険もあるので特に初めての場合は注意する。

事実を提示すればそれでよい、と結果だけを提示することでアナリティクスディレクターの担当部分は終わりである、というのも考え方の1つであるが。もし伝わらずに意思決定になんの影響も及ぼさなければプロセスの失敗であり、分析も無駄でなるので出来る限りのことはしよう。もちろん理不尽な言いがかりに黙っている必要はない。

アナリティクスディレクターの役割(2)リソース配分を決める

リソースというのは常に足りていないものだ。それがたとえ1人で分析の全てを行う場合であればなおさら全てのことができない。であればメンバーの得意不得意がある中で誰が何をどこまで担当するかを限られたリソースの中で配分していくことになる。

では、メンバーの特性ごとに分担の方法案を考えてみよう。

分析担当者もアナリティクスディレクターが兼ねる場合

分析担当者が自分しかいない、あるいは他にいてもスキルが低いような場合はその人が実質的にアナリティクスディレクターを兼ねることになる。当然、すべてのことはできないし、予算や納期の問題で外注が使えないのであれば分析を中心にしてアナリティクスディレクターとしての役割はせいぜい1割か2割程度しか当てられない。それ以上やっても「箱を作っても使う人がいない」状態になってしまう。

分析の専門家がいる場合

分析の専門家は同じレベルの専門家以外とのコミュニケーションが苦手というか興味がない人も多いので分析に特化させられればそれが一番良いのだが、納期や優先順位を無視して自分のやりたいことをやり出すので放置はできない。アナリティクスディレクターの負担が大きくなるがうまくかみ合えば結果が出せるはずだ。

データアナリストの場合

専門家よりなら分析に特化させる、アナリティクスディレクターに向いていそうなら分析を多少削ってでもそちらの仕事もやらせてみる、オペレーターレベルしかできない人は明確な指示を出してその部分を担当させるなど、データアナリストといっても実に幅広いのでその人の能力や志向をまず把握することが先決になる。

マーケターの場合

一緒に動くのはアナリストばかりではなく、マーケターということも多いだろう。この場合は相手のスキル次第だがあまり高度なことができる人はあまりいないので何をしたいかを聞いて分析側で主導するのがよい。また、マーケターは分析以外にも仕事を抱えており、その点は配慮した上で分担を決めてあげよう。

アナリティクスディレクターが複数いる場合

アナリティクスディレクターが1人である必要はなく、やることはたくさんあるので数人で同じ案件に取り組めばいい。コミュニケーションやプログラミングなど得意分野はその人が行い、その他は共同作業で進める。理想的だとは思うが、現実的に成り立つかは微妙。

アナリティクスディレクターの役割(3)適切な納期に適切な内容を届ける

収集・分析・洞察は実際にやってみないとわからないことが多々あるので、もしかしたら間に合わない、必要な情報・データの収集ができない、より良い方法があるかもしれない、納期を優先するならここまでならできる、など随時意思決定者と内容、納期について協議を行う。

重要性や緊急性が高い場合は途中でリソースの配分を変えることになるのはデータ分析に限らないし、最悪なのはコミュニケーションをとらず独自の判断で進めることで、意思決定が必要な時に十分な内容が伝えられないことである。

そして、行ったり来たりがが起きるのが当然であると見越したうえでスケジュールを経てができるかどうかが納期を守れるかの大きなポイントだ。どんなに正確であっても時期を逃した分析に意味がないことは何度言っても足りない。

アナリティクスディレクターの役割(4)様々な部署や人との「つなぎ役」になる

プロセスを動かしていく中で必然的に実に様々な人々と関りが発生するため「つなぎ役」としての能力も必要だ。どこともめても仕事が滞るので、アナリティクスディレクター1スキルというよりは、必須かつ重要な構成要素として考えた方が良いだろう。

要求をしてくる意思決定者といっても経営者から営業までいるし、分析を行うのもデータサイエンティストのような専門家からツールをいじってレポートを作るだけの人もいる。

大量のデータを扱うためのインフラやツールの設定、システムによる自動化といったことはエンジニアにお願いするし、社内のリソースが足りなければ協力会社と良い関係を気づく必要がある。

お互いの歩み寄りが大事なので本音を言えば向こうからも歩み寄って欲しいのであるが、お互いに必要だからこそそれを理解している側からまず歩み寄ることで向こうからも歩み寄ってくれることを期待しよう。ただし強制はできないし、向こうが歩み寄って来なかったとしてもこちらの歩み寄りはやめてはいけない。

アナリティクスディレクターがつなぐ様々な人々をリスト化するとこんな感じになる。

  • 経営者
  • コンサルタント
  • 営業
  • マーケター
  • データサイエンティスト
  • データアナリスト
  • デザイナー
  • エンジニア
  • 外部の協力企業
  • ツールベンダー

意思決定がそこにあればかならず分析が伴うはずで、つまりはアナリティクスディレクターは社内のあらゆる人と関わる可能性がある。

これらの人々は考え方も背景もスキルも違うので向かい方も相手に合わせることでコミュニケーションを円滑に進めやすくできる。それぞれとの付き合い方は別途まとめる。

アナリティクスディレクターについてのそのほかの話題

アナリティクスディレクターの役割については以上であるが、役割を把握してもそれだけでうまく行くはずもなく、以下のような問題や課題がある。

  • アナリティクスディレクターがつなぐ様々な人々それぞれとの付き合い方
  • 重要なのに全然目立たないアナリティクスディレクターをどうアピールしていくか
  • データ分析と他部署の「つなぎ役」がいないと何が起きるのか
  • 組織としてのデータ分析に必要なのはアナリティクスディレクターである
  • アナリティクスディレクターはどんな人が向いているか
  • アナリティクスディレクターの採用と育成
  • アナリティクスディレクターはデータ分析の文化の醸成にどう関与するか
  • アナリティクスディレクターの先に何があるのか

本当はこの記事にまとめて書こうとしていたのだが多すぎて無理なので個別にまとめるか、後で追記する。

アナリティクスディレクターの議論をもっと深めるために異論反論大歓迎

今までやってきたことと、今後やらなければならないことの集大成になった(後者が9割)が、新しい要素というのはあまり見当たらない。「つなぎ役」について書いた記事の反響の大きさを見ると、同じことをやっている人は結構な数がいるはずで、けれどもここまで言語化したのは見たことが無いので書いてよかったと思っている。

これからデータ分析がより広まっていく中でアナリティクスディレクターは絶対に必須な役割であると確信している一方で、今回の記事はまだまだ未完成である。多分ずっとそう言い続ける気がするが、議論が盛り上がったら嬉しいし、異論反論をたくさんいただければ幸いだ。