データ分析と他部署の「つなぎ役」がいないと何が起きるのか

分析実務をやったことがないリーダーと現場の人だけ=機能不全への直行便

「つなぎ役」がいないということは、構図としては「分析未経験なリーダー+自分のやりたいことしかやらない、または他のことができる能力がない現場の人」の組み合わせであり、特にデータ分析を始めたばかりの企業で見かける構図で、チームであれ人であれ機能せずに失敗するところまで含めてよくある話だ。

いきなり高度な技術にしか興味のない専門家や、数がいれば良いと考えてあまりスキルの高くない人を複数採用や異動で分析未経験なリーダーの下に入れたりすれば機能しなさそうな気がするが、実際に機能しない。

そしてその経験は失敗からの学習に生かされることなく「データ分析なんて使えない」という結論となり無かったことにされるが、これは関わった人はもちろんデータ分析を力にできない企業にとっても大きな損失だ。

なので特にデータ分析を始める場合は専門家よりもアナリティクスディレクターを置く方が良いと考えるが、それだけ言っても伝わらないと思うので、その前に「つなぎ役」がいなかったらどうなるのか?について自分が見聞きした話をまとめてみよう。

対他部署:営業ともめる、エンジニアともめる、それ以外には相手にされなくなる

データ分析は非常に幅広い部署との関りを持つが、特に要求を出す意思決定者と、システム周りで依頼をすることの多いエンジニアとの関りが強い。

相手が経営者の場合はもめることは少ないだろう。命令だと言われたらそれまでだし、役に立たないと思われたらデータ分析そのものが行われなくなるだけだ。

これがが営業やエンジニアといった現場同士でどちらに権限もなく、お互いに自分の主張だけをし始めるともめることになる。もめるならまだしもコミュケーションが断絶することもよくある。

また、もめる気が無くてもコミュニケーションが得意でないか、コミュニケーションができてもスキルがないか、コミュニケーションする気がない人しか向き合わないのでは仲良くしろと言うのも厳しい。 

こうなってくると、直接関わらなければ仕事にならない部署以外からも相手にされなくなってデータ分析組織が孤立し、存在理由も問われかねない。

対部署内:作業が細分化しすぎてノウハウが共有されない、個人への依存が進む

部署内での「つなぎ役」がいないで個々人に任せるとそれぞれが独自のルールで作業を始める、自分のやりたいことだけをやろうとする、しかもお互いに何をやっているか概要はともかく詳細は知らない。

普段はそれでも困らないが、その人が退社したり風邪をひいて休んだりしたときに一気に表面化する。他部署からしてみると、同じ部署の人に話を聞いているつもりがまったく共有されていないために呆れられることもしばしば。

組織のリーダーがきちんと押さえていればよいが、そのリーダーは大抵は分析未経験者でその判断もできないし、個々で勝手にやっていられる状況はデータ分析者にとっては心地よいので自ら変えるモチベーションは高くない。

対クライアント:納期や価格がめちゃくちゃな依頼を断れない

営業がクライアントにいい顔をしたくて納期や価格がめちゃくちゃな案件を勝手に取ってくることもある。最悪なのは「クライアントともう決めてしまった」で、立場が弱かったり話し合いができない状態だとそのまま押し切られてしまう。

事前に何をしようとしているかを知って止めさせたり、その上司などの別のルートを使って交渉することもできる。そのためには意図的に日常から関係を作っておく必要があり、データ分析の中だけで閉じこもっているとその関係は築けない。

後は仲間内で文句を言い合うぐらいしか出来ることはなく、これは「つなぎ役」がいればなんとなるという話でもないが、いれば回避できる可能性は格段に高まる。

対外注:適切な依頼が出せずにコストばかりがかかる

丸投げは論外にしても、どんなスキルの人にどんな依頼を出せばいいのかをきちんと見定めないとコストに見合っただけの働きをしてもらうことはできない。

これは本来リーダーの役目であるが、現場の状況を適切に教えてあげないと判断は難しい。分析やプログラミングの評価は専門家の意見を聞くべきだが、一方でプロセス全体にどう貢献できるか、常駐しているなら社員との関係はどうか、といった視点も必要である。

データ分析人材の採用がその場しのぎになる

データ分析といっても実に幅広い分野であり、特定の分野に非常に特化した人もいれば広く浅くの人もいる。最先端の論文を読み込んで実際にやってみる人もいればツールを操作して出てくる数値をパワポにまとめるだけの人もいる。

データサイエンティスト、機械学習エンジニア、データアナリスト、グロースハッカー、カスタマーサクセス、リサーチャー・・・これ、とある50人もいない企業の募集に出ていた分析関連職のリストだ。実はこれでもまだ半分ぐらいで、しかも「専任のデータアナリストはいない」という。

分析未経験リーダーと人事が現場から上がってきた要望をそのまま募集に出せばこうなるし、流行り記事を真に受けて環境も何もないのに「データサイエンティスト」を雇ってしまうという話はあちこちに転がっている。

権限はなくとも「つなぎ役」が介入できればいかにおかしいかを説明することもできるのだが、その機会が訪れるのはまれだ。

生産性がひどく落ちる

以上見てきたように、「つなぎ役」の不在は様々な部署にまたいだ動きを誰もしておらずバラバラに活動しているということになる。これでは生産性が上がるどころかあちこちで不具合が発生してその対応に追われ、分析にかけられる時間が少なくなってしまう。

今までいなくても大丈夫だった、というのは勘違いで、問題が起きても放置されたか、誰かが知らないところで隙間を埋めていたか、問題が起きても問題と認識できないほどのことしかしていないか、実際は何もしていないのかのどれかだ。

データ分析組織にはアナリティクスディレクターが必要だ

というわけで次は本論である「データ分析組織にはアナリティクスディレクターが必要だ(仮題)」について書く。

ありがちなのは「とりあえずアナリティクスディレクターという名前を付けてスキルや適正を考えないで放り込む」だがそういった言葉遊びではなく、「誰かがいつの間にかにやってくれるのを待つのではなく、役割として置くべきだ」という主張である。