データ分析組織に必要なのはデータサイエンティストではなくデータ分析プロセスをマネジメントする人

データサイエンティストだけいても機能するとは限らない

データサイエンティストやデータアナリストなど、データ分析の専門家を雇っては見たもののどうも機能しないという話が聞こえるが、それもそのはずで、データ分析というプロセス全体を見ると彼らが得意とするのは主に「分析」フェーズであり、必ずしもマーケティングやコミュニケーションが得意であるとは限らない。従って、データサイエンティストだけでは当然足りないという事態になるわけだが、データ分析がプロセスであることを理解していないと、分析が得意な人に任せればうまくいくという勘違いが起こる。

これからレストランを始めようとするのにシェフだけ連れてきて、さぁ経営方針を考えなさい、内装どうするか決めなさい、人の採用をしなさいなど料理以外のことも任せようとするのと同じである。なお、現在多くの企業で起きているのはシェフどころか料理未経験者に全面的に丸投げという状況だがそれは論外だ。

データ分析プロセスについてはこちら。

データ分析組織を始める時にはデータ分析プロセスをマネジメントできる人が必要

データ分析を個人から組織としての活動にしていく際に必要なのは、データ分析をプロセスとして捉え、その全体をマネジメントできる人材である。どのようなスキルを持つ人かというと

  • データ分析がプロセスであることへの理解
  • 前処理を含めた分析の実務経験
  • コミュニケーション能力
  • 分析手法の基本的な知識
  • マーケティング能力

特に前半3つはどれか1つでも大きく欠けるとうまくいかない。詳細は以下の通り。

データ分析がプロセスであることへの理解

「分析」だけやればいい、目的がおかしいのもデータが汚いのも自分達の責任ではないから関係ない、というのは絶対に間違いである。データ分析の価値は意思決定の質が向上することにあり、それが達成できないのであれば何をしようが無価値に過ぎない。それが理解できなければデータ分析のマネジメントはすべきではない。

前処理を含めた分析の実務経験

少なくとも前処理、分析、洞察、伝達(プレゼン)までは一通り経験しているのが望ましい。特に前処理の経験が乏しいあるいはまったくないと、工数の見積もりがひどく甘くなって納期設定がめちゃくちゃだったり品質の低下を起す。また、誰がやっても同じ雑用だと考えて下請けに丸投げして膨大な工数を取られても気づかない。

コミュニケーション能力

経営者から現場の営業やマーケター、あるいは外部のクライアントといった分析の依頼者に対してと、データサイエンティストなど専門家に対しての2つの違うコミュニケーションが共にできるか、少なくとも抵抗がないこと。前者が欠けると組織として機能できないし、後者が欠けると組織が制御できない。

分析手法の基本的な知識

専門家の言っていることの話が全くわからないでは困るが、かといって最新の論文を読み込まなければならないというのは非現実的だろう。説明を受ければ詳細はともかく何をどうしているのか概ね理解できるぐらいの基礎知識があればマネージャーとしては十分だと思われる。

マーケティング能力

これも3つの意味がある。まず、いわゆるビジネス理解。様々の人々の課題についてまったく議論ができないのでは、何を知るべきかを考えることは難しい。そうなれば、誰かに言われたことに対してただ答えるだけになってしまう。

2つ目に、「次にどうするべきか」の提案力。この提案は本来であればアナリストがやるべき範疇ではないのだが、その分業を行うにはほとんどの場合時期尚早であろう。もしこの提案を行わなければ「口だけで何もしない」という評価になってしまう。

最後に、データ分析組織の存在をアピールする必要もある。大半の人はデータ分析といっても何をしているかもわからないし、データ分析が自分にとってどう役に立つかも知らない。データ分析組織のことだけでなくデータ分析についての啓蒙を行わなければ組織の将来も危うい。

データ分析プロセスのマネジメントができる人はどこにいるのか

言うまでもなく全部できればそれに越したことはないのだが、ただでさえ少ないデータサイエンティストなど専門家にデータ分析プロセスのマネジメントまでさせようというのは無理がある。もしいたとしても、相当な額を出さねば雇うことはできないだろう。見合った報酬も出さずに高度な能力を要求するなどという虫のいい話はここでは無視する。

まずデータ分析そのものがまだまだ浸透していないうえ、プロセスして動かすことへの理解はもっと少なく、したがって経験者はほとんどいない。一番良いのは分析に関する知識がある程度ある人の中で、マネジメントの特性を持っている人がいればその人にやらせてみるのがベストだろう。が、大抵の場合は専門知識を持っているがマネジメント向きでないか、マネジメント特性はあるが分析の知識はまったくないというどちらかになる。では分析者にマネジメントをさせるか、マネジメント経験者に基礎的な分析を学ばせるかであるが、これはまだ評価しがたい。後者で失敗する話はよく聞くが、前者がどうなるかはこれからだ。

というわけで、データ分析プロセスのマネジメントについて特性や知識を持っている人が社内にいたら、早めに確保して経験を積ませるのがよさそうだ。うまく伸びれば、近い将来その企業にとって大きな力の源泉となることだろう。