データ分析組織は独立していた方がよい理由

「各部署の中で少しデータ分析を知っている人がやる」ではすぐ限界がくる

理想のデータ分析組織とはどんな組織だろうかではその1つの要因として「理想的なデータ分析組織は経営層直轄で独立かつ経営企画と同格である」を挙げた。

その後よくよく考えてみると、これは理想的にどうかという話というより企業が組織としてデータ分析を行おうとしたら自然にそうならざるを得ないのではないか、と思うようになった。

実際、データ分析組織について表に出て来ている話を見聞きすると、既存のマーケティングなどとは別の部署で、依頼を受けたりプロジェクト単位で各部署と関わるといったモデルが多いようである。

というわけで、各部署の中で分析が出来る、あるいは興味ある人が空いた時間に行うだけではだめで、本気でデータ分析に取り組むなら独立した分析組織にしないとうまくいかないのでは、ということを順を追って書いていこう。

データ分析組織は独立していた方がよい理由

スキルが全然違う

まず最初に、営業したり企画を考えるスキルと分析するスキルは別物ということがある。何がどう違うのか言葉できちんと説明しろと言われても難しいけれど、同じようなスキルだという人もいないだろう。

なので同じ人が両方をうまくやるのは大変だし、両方できる人がたくさん採用できるわけでもないので、できる人がやればいいだと誰もやらなくなる。では部署やチーム内で担当を決めればいいのでは、と思うだろうがそれだとうまくいかない。

日常業務に埋もれて分析を優先できない

営業やマーケティングなどの各部署内でデータ分析を行っていると、どうしても忙しくなればなるほど分析は後回しになる。なので分析により注力する人がいたほうがいい。

しかし、同じ部署なのに忙しい時に1人だけ「自分は分析が主担当だから」は通用せずに結局目の前の仕事の対応に駆り出されるだろうことは目に見えている。結局レガシーな営業やマーケティングはそのまま残り続ける。

部署のマネージャーの後ろ盾があれば役割分担も可能かもしれないが、マネージャー次第で分析が出来るかが変わってしまうのでは心もとないし、役割分担だけで解決するならばわざわざ独立した組織にする必要はなく、これ以外にも理由がある。

客観的に分析できず、自分の主張に合う結果を出してしまう

データ分析を行うにあたり最重要なこととして「客観的に見る」がある。ところが、提案を行う当人の分析はどうしても主観的になったり自分の主張に都合の良い結果を出しがちだ。

例えば自分が企画したキャンペーンの効果測定。結果が悪かったのをそのまま報告はしづらい人がほとんどだろう。正直に言えばクライアントや上司に怒られるかもしれないし評価も下がるかもしれない。失敗を認められない人は自ら隠蔽しようとするし、できなければ改竄しようとするかもしれない。

逆に、結果が良かった時は誇張する。控えめに見ても、何かしら誤魔化したりした形跡を見つけるのは容易い。これは本人の評価に直結するのだから、よほど注意深く客観性についてレクチャーでもしていない限りその本人に評価させる方が間違いだ。そしてこのレクチャーを行っている企業がどれぐらいあるのか、といえば実に心もとない。

そこで、独立した別の部署が分析を行うことで客観性を担保することがやりやすくなる。もちろん、独立させれば全て解決するかといえばそうでもなく、仲の良い人にとって都合が悪い結果を報告するのは分析者にとっても気分がいいものではないし、その後の関係を考えると手心を加えたくなってしまうのは仕方ない。はっきり言えば逆恨みされることもある。

なので独立したら完璧な中立性が保てると考えるのは期待しすぎだろう。それでも悪いことがあっても誰も何も言えない組織よりはましだ。

上司からの圧力に抵抗できない

もし部署内に分析担当者を置いたとしよう。その部長が企画したキャンペーンの効果測定を部下が行った際それが大失敗だったとする。部下はともかくも上司に報告するが、さて何が起きるのか。

否定とやり直しで済めばいいが、怒鳴られたりするかもしれないし、陰険な人なら後で評価で復讐されるかもしれない。

あるいはうまく行ったように見せるために数字を誤魔化すよう指示されるかもしれないし、受け入れたふりをして都合の悪い話を隠蔽し、部署の外にはうまく行ったように話すかもしれない。

これらのことに対して上司部下という関係があると、部下は抵抗するのがとても難しい。たとえ客観的に分析ができたとしても上下関係を乗り越えられるわけではないので、組織として守る必要がある。そのためにはやはり別部署の人が分析をしておく方がよいだろう。

もしこの上司が社長だったとしたら、このブログを読むより求人サイトを見に行くことをお勧めする。

定義や集計がばらばらになって調整に時間がかかる

独立した部署を作る最大の理由は客観性であるが、それ以外にも細かい問題はいろいろある。まず、各部署で独自に分析を行っていると、大元は同じデータを使って同じ名前の集計を行っているはずなのに集計方法や定義などがずれる。

見る指標が全然違えば問題にはならなくても、例えば売上を税抜・税込で見るのかという些細なことでもずれていれば認識合わせに手間がかかるし、細かい例外処理のやり方が違うとなれば確認するだけでも大変だ。数字を統一しようにも業務にしっかり組み込まれていると結局誰も手が出せずそのままになり、膨大な時間とコストを消費し続ける。

独立した分析組織が共通な数値を管理しておけば少なくともこのずれの発生は抑えられる、と言いたいところだが結局各自でカスタマイズはするだろうからこれも完全には無理だが、何が起きているかを握って置ければかなり混乱は抑えられるはずだ。

50年前にはあった話

データ分析組織の議論については実のところ、『マーケティングインテリジェンス―リサーチから情報管理システム確立へ』でも、データ分析組織(この書籍では「インテリジェンス・サービス部」)は社長に次ぐ副社長が独立した部署を持ち、他のマーケティングや製造の副社長と同列でなければならない、というモデルが提案されている。

この書籍が日本で発売されたのは1969年なのでもう50年前には議論されていたことだが、今に至っても実現している企業は非常に少ないのはデータ分析の文化が無かったこともそうだし、最近のビックデータやデータサイエンティストが流行してもデータ分析を所詮は現場のエンジニアあたりがやることだと考えている人が多いからだろう。

この勘違いがなくならないと、分析者は現場の作業者と同じレベルで扱われ続けることになる。

では、独立したデータ分析組織をいきなり作れば解決するかといえばそうでもない

データ分析を始める時に必要なのはデータサイエンティストのような専門家ではなく「アナリティクスディレクター」であると合わせて「データ分析を始めるなら独立した部署にアナリティクスディレクターを置くべき」という結論になる、と言いたいところだがいきなこれを実行してもうまくいくかは怪しい。

データ分析の文化がないところにいきなりデータ分析組織を作ったところで周りに相手にされなかったり、正確な情報・データを提供しても当人達が気に入るかどうかだけで判断されては分析組織の存在意義がない。ここ数年のデータ分析組織の失敗の大きな要因の1つだろう。

ということで現実的には「どこかの部署で分析を行って実績を上げてから分析組織を独立させる」という選択肢を取らざるを得ないのではないだろうか。そしてその部署はデータ分析が効きやすそうなところ、特にマーケティングあたりだろう。

ただ、いくら現場で頑張ったところで経営陣の意思決定がお気持ちドリブンではデータ分析が企業の文化になりようがなく、社内にデータ分析の文化を作るのに一番良いのは「社長が自らの意思決定にデータ分析を活用すること」なので、社長のデータ分析リテラシーがないと今回の議論にも意味がない。

なので社長も含めてデータ分析リテラシーを身に着ける場がない現状において、どうしたら世の中にデータ分析リテラシーを広めることができるのか、ということを考えなければいけない時期なのかもしれない。今後はそちらにも注力するつもりだ。