書評・感想・・・『戦史に学べ』

副題は「太平洋戦争にみる情報マネージメント」

日本人の情報無視についてはこのブログでもよく取り上げており、特に『大本営参謀の情報戦記』を読んで日本のデータ分析のいままでとこれからを考えるなども書いているが、一体いつどこで手に入れたか記憶に無いが読んだらなかなか良いだったので紹介させてもらうことにした。

やっぱりお粗末な日本軍の情報

日本軍の情報の話は

  • インテリジェンスの意識が低く金もかけないし人も育てない
  • 価値を感じないから情報を取られることへの危機感が薄い
  • 良い情報があってもうまく使えない

という話が延々続くので読めば読むほどあきれ返るのだが、この書籍でも流れは同じだ。そして端々に「現在の日本企業も同じではないか」と警鐘が続く。発売が1984年なので35年前になるが、その後状況が改善した様子もない。50年も前に『マーケティングインテリジェンス―リサーチから情報管理システム確立へ』という書籍が出ているアメリカとの差は開くばかりだ。

情報だけでなく、ハードは作るがソフトが付いてこないことにも触れている。

牛車に運ばれたゼロ戦の話

昨今のツールやシステムを導入しては使えないという話を見ていると、ハードは重視してもそれを使うための仕組みや人を育てないのがどうも日本人の性格らしいというのは感じているのだが、以前から同じらしい。

零戦は名古屋市の南、海に面した三菱重工の工場で生まれた。まわりに空地はなく、四十八キロ離れた岐阜県の各務原飛行場まで運ばねば飛行機を飛ばせない。道中は舗装もされていないひどい道である。どうやってそこまで運ぶか。
結局牛車を使うことになった。(中略)試作一号機以来終戦まで、戦闘機の牛車輸送という喜劇がかわることなく続くことになる。

『戦史に学べ』 P88

この話は知らなかった。とりあえずため息だけしか出なかったのと同時に、「人工知能」なんてまさにハードがあればあとはうまくいくなどと考えてそれを使う人やデータを集める仕組みなどが蔑ろにされているのと同じに見えた。

ハードではないが「データサイエンティスト」を雇えば良いという発想も同じだろう。目の前にあるものには意識が行くが、その裏にある仕組みには想像力が及ばないということなのだろうか。

アメリカ軍との対比が良い参考になる

この書籍の良いところは、日本の情報軽視の話題だけでなく同時期のアメリカ軍が何をしていたかも書いていることだ。

人材面だけ見てもアメリカ側には情報参謀として就任から終戦までずっと太平洋艦隊司令長官ニミッツ傍らにいたレイトン、CIU(Combat Intelligence Unit:戦闘情報班)の班長であり日本への留学経験もあるロシュフォート、日本の暗号を破り戦後はNSAでも活躍したフリードマンといった情報の専門家が出てくるが、日本軍にはそういった人がいない。

『大本営参謀の情報戦記』の著者である堀栄三は開戦後に陸大を卒業して大本営で情報部に配属されているが、大学で情報の教育は一切なかったと言っているぐらいであり、層の厚さも何も比べることすらできない。

何にもまして上層部の情報に対する考え方がまったく違うのであり、まさに現在のビジネスでもそのまま引き継がれていると感じるのはこの書籍の著者に限らないだろう。

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最後に、最も重要だと思われる一文を紹介しておく。

なお、引用にあるInf.とはインフォメーションのことで、インテリジェンスとの違いはインテリジェンスとインフォメーションとデータと情報の違いに書いたように入手した生のままの情報がインフォメーション、意思決定のために分析された情報がインテリジェンスである。

われわれ日本人に欠けているのは、Inf.からインテリジェンスを作り出す力であり、また、その必要性に対する認識である。これは今日の経営にとっても重要なことで、社長室、経営企画室等々、それらしい名称の組織はどこにでもあるが、インテリジェンスと呼ぶにふさわしい活動を行っているところが、はたしてどれだけあるだろうか。

『戦史に学べ』 P99