「今あるデータで何かやれ」と「何かうまいものを作れ」の共通点、そしてその弊害

丸投げして「後はうまくやってくれるんでしょ」は通用しない

上司が部下に、大企業が中小ベンチャーにどこかで聞いてきただけの話を鵜呑みにして「うちにはデータがあるからそれを使って何かやれ」と丸投げし、「後はうまくやってくれるんでしょ」などと勘違いし、挙句に「うまく行かないのはあいつらのせいだ」などと言い出す人は後を絶たない。

その話の1つとして「今あるデータで何かできないか」で始めるとデータ分析は失敗するのだが、大半の企業ではこの言葉がまかり通っている。

「今あるデータで何かやれ」は「今ある食材で何かうまいものを作れ」と同じであり、どんな料理を出すのかも知らないで入った初めての店でそのような注文をしたところで満足できるどころか健康に害を及ぼすこともあり得る。データ分析も同じだということを料理と比較しながら説明していきたい。

「今ある食材で何かうまいものを作れ」と丸投げすると何が起きるか

料理「おなかの減り具合が判らない」=分析「問題の解決に適切な解答が得られない」

全てを料理人任せにするということは、自分の腹の好き具合に関わらず通常ないしはそれよりも多い量が出てくるということだが、きちんと全て食べきれたりそれで十分かというとそうとも限らない。

お昼ご飯を遅くにたくさん食べたら夜ごはんをいつもと同じ時間に食べることはないし、朝ごはんが軽すぎれば昼は多めに食べたくなったりするだろう。いつも通りだったとしても体調の良し悪しも影響する。しかし、そういう事情は丸投げされた料理人には関係ない。

データ分析でいえば、分析リテラシーが低すぎて「何を言っているかわからない」と結果を消化できなかったりするのと同じだ。

おなかの減り具合なら自分でもわかる人は多いので「大盛で」「ちょっと少なめで」ぐらいの注文をすることはあっても、データ分析の結果をどれぐらい消化できるかを自覚している人は少ないので結果が出てから「使えない」「足りない」となりやすい。

料理「それは昨日食べた」=分析「そんなことはもう知っている」

昨日ラーメンを食べたから今日はラーメン以外を食べたいと思ってもラーメンの食材しかなければラーメンしか出てこない。

分析をした結果が当たり前すぎて使えないという話がよくあるが、とりあえずデータだけ渡されていれば最初に出てくるのが誰でもわかる「当たり前」であることは「当たり前」だ。

これも「昨日ラーメンを食べた」なら一言で済むが、一般的な業界知識だけでなくその企業に特有の経験のことなどすぐに共有できるわけもないのであり、「当たり前の結果」を事前に共有しているのでなければ起きるのは必然だ。

料理「それは食べられない」=分析「実行できない」

大嫌いな食材のせいで料理があっても食べられないこともある。嫌いなだけなら詰め込めるかもしれないが、アレルギーを持っているのであれば食べてしまえば大変なことになる。

データ分析の目的は意思決定のためであり、実現不可能な意思決定がされることはない。もし予算の削減や解雇が適当だったとしてもそんな簡単にはできない。

「思う通りのことを言ってくれ」と言われて本当のことを言ったら大変なことになったら、真に受けた側よりもそんなことを言う方が悪い。

料理「安くて脂質と塩分たっぷりなファストフード」=分析「とりあえずプログラムを回して出てくる結果」

何でもよいのであれば、近所でファストフードを買ってきてそれを出すという手もあるだろう。安い代わりに脂質や塩分がたっぷり含まれており、そればかり食べていれば失われるのは健康だとしても本人がそれで良いと言うのであれば取引は成立する。

データ分析でいうファストフードは、いわばとりあえずデータをプログラムに放り込んで出てくる結果に比較することができるだろうか。

分析者側の能力不足かもしれないし、丸投げする相手のリテラシーの低さに付け込んでいるだけかもしれない。それでも受け取る側が満足しているならばそれでよいのだ。

ヒアリング能力の限界

では分析者側は丸投げされたら勝手にやればよいのかというとそうでもない。相手の立場が強ければ後でどのような言いがかりをつけられるかもわからないので自己防衛しなければならない。

なので分析者側がヒアリングを行うことで上記の問題のいくらかは回避できるが、やはり限界はある。

  • 企業や業界の既存知識は特に外部の人はすぐに身に着けられない
  • ヒアリングしようとしても「それを考えるのがお前の仕事だ」と言われたらそれまで
  • ヒアリングができる人がいても目的がなければヒアリングしようがない

といったような問題はヒアリングだけでは解決できない。結局のところ使う側に主体性があるかどうかが最大の問題だ。

ちゃんとしたものが食べたいなら、ちゃんとした注文をするしかない

もし自分の腹具合や好みを反映し、健康にも気を使った料理を食べたければ、その希望を料理人に伝える以外の方法はない。同様に、ある目的を解決する意思決定のために必要な情報が欲しければ、主体性を持って要求しなければならない。

データ分析の失敗にはそれはそれは数多くの要因があるが、失敗する理由ランキングを作ると上位3つには確実に入ってくるであろうこの手の話はもっと世の中に共有されていてもおかしくなさそうなのだが、不思議とあまり聞かないのはなぜだろう。