データサイエンティスト・データアナリストが就職や転職を考える際に注意すること2019年度版

いろいろ踏まえて最新版

データサイエンティスト・データアナリストが就職や転職を考える際に注意することという話を書いたが、イベントでキャリアについて話す機会があったり新しい役割についての記事も随分増えたのでそれを踏まえた最新版を書いてみることにする。

入社してから「こんなはずじゃなかった・・・」を避けるために

転職してみたら自分の持っているスキルと求められているスキルが違う、関係ないことばかりやらされる、求められる仕事のレベルが低すぎるなど、入社してから「こんなはずじゃなかった…」という話は後を絶たない。もちろん、データ分析も例外ではない。

というわけで、データサイエンティスト・データアナリストが就職や転職を考える際に注意することを考える。なお、データサイエンティスト・データアナリストに限らず、アナリスト全般を想定しているのでWebアナリスト、リサーチャーなど自分に合わせて適度に読み替えてもらえればよい。

なお、アナリストとエンジニアの違いについては「データ分析をする人」は「アナリスト」と「エンジニア」に分かれ、その違いは「他の誰かが意思決定するための情報(つまりインテリジェンス)」を作るかどうかにあるを参照のこと。

データサイエンティスト・データアナリストが就職や転職を考える際に注意すること

言葉の定義を確認する

データ分析という言葉が広まってきたのは良いことだと思うのだが、その代償として「データ分析」「データサイエンティスト」「データアナリスト」などデータ分析に関わる言葉が企業によって意味することが全然違うという事態になっている。

データサイエンティストと書いてあるけど機械学習のためのインフラエンジニア、データアナリストとあるけれども社内コンサルタントやマーケター、あるいはデータアーキテクトが主業務として求められているなんてこともある。

なので求人情報や面談などではその言葉が何を意味しているのか、どういった役割を想定しているのかは真っ先に、かつ具体的に確認すべきだ。

「これから分析に力をいれようと思っている」は要注意

「これから分析に力をいれようと思っている」「データ分析は重要だと考えているのであなたが主導して欲しい」と言う話は面談で結構聞くのだが、もしこの話を聞いたら慎重に考えた方がよい。

新卒採用だったらこれを言われたら真っ先に候補から外してもよいぐらいだ。その理由はこれからデータ分析を始めるということは、分析だけではないその他の様々な問題にも対処せねばならず、そこに多大な労力を使うことになるからで、入社しても分析にはほとんど携わることができない、という可能性も十分にありえるからだ。たとえば

  • 経営者含めて社内の人にデータ分析の価値や方法を伝える
  • データ分析は実行しないと意味が無いことを理解させ実行させる、あるいは自分で動かす
  • データやインフラをゼロから整備する
  • 同僚がいないので相談相手になる人がおらず、孤独な闘いになる

ということが挙げられる。「これから分析に力をいれようと思っている」ぐらいなのでその価値に対してはむしろ懐疑的なため、経営者のバックアップはあまり期待できない上に、使う分析もごく基本レベルというのが普通で、たとえ高度(といっても例えば重回帰とか決定木レベル)な分析を持ち込んだところで誰にも理解してもらえず孤立する。

もちろんその結果が使われることもなく、このセリフを言った経営者の元でデータ分析は定着するどころかまともに動かないというのがお約束。本当にデータ分析に価値があると思っているならばとっくに初めており、外部からの転職者やましてや新入社員にいきなり全面的に任せるなどということは通常では考えられない。

すでにデータ分析を行っている企業であればこのあたり事情が違い、より分析に集中できる可能性が高い。ただしすべてが揃っているということはないので自分で作り上げていく必要は常にあるがまったく何もないよりははるかに良い。

経営者に近い立場で幹部として参加する、チーム立ち上げなどの組織運営のキャリアを積みたいなど「分析」とは別の事情があるならともかく、アナリストを目指すならば基本的には避けた方が無難だろう。

どのような業務とスキルが必要とされているか

これもよくあるのだが、企業側がデータ分析に理解が乏しいととりあえず統計学、機械学習といった手法の知識やプログラミング能力だけがあれば良いと勘違いすることが多い。

ところが、その企業において必要とされるスキルは求められる業務ありきであり、先にどういった役割が求められているかを抑えておかないとミスマッチを起こす。「分析」について考えると、

  • 特定分野での最先端の知見が必要なのか、実務で使える程度で手広く知っていれば良いのか
  • 手法を道具として使えれば十分なのか、理論的背景の理解は必要か
  • エンジニアリング能力は、前処理を含めて分析するためのコードが書ければよいか、インフラ構築のための知識が必要か
  • コンサルや営業として独力で仕事を開拓したりプロジェクトを回せる能力か、誰かと組んでアナリストとして活動するのか

といったスキルを考える必要がある。「データ分析ができる人」を求めている企業はこのあたりが漠然としており具体的に何をどうしたいかのプランがない。

また、「データを扱う仕事だから」という理由でデータアナリストとあるしそれを求められてもいるが、他に誰もいないとアナリストの仕事をするためにデータアーキテクトとしての仕事をすることにもなるので現状の体制や人員のスキルも確認が必要だ。

もしデータアーキテクトの部分を担当している人がいない場合は気を付けよう。担当者が不在でエンジニアが片手間でやっていると「アナリスト」として入ってもこの仕事ばかりになるかもしれない。どの役割をどれぐらい求められているかお互いにすり合わせよう。

キャリアについてどういったプランがあるか

データ分析のキャリアなど世の中に今までないのだから、「当社にはキャリアプランがあります」という話はアナリストに関してはほぼあてにならない。

一応キャリアプランはあっても実はコンサルタントとしてのキャリアだったり、現実を伴わない空論だったりしないかよく注意しよう。

採用のためにありもしない良い話をとりつくろったりするよりも「正直なところ、過去の事例もほとんどないのでどうなるかわからない」ぐらい言ってくれるほうが信頼できる。

データ分析のインフラは整っているか、おかしな制約が無いか

それなりの規模の企業であればシステムや分析ツールは大体何かしら入っているが使い方は企業によって大分状況が違い、データ分析に理解がある人が上層部にいない企業だと致命的なレベルでインフラが整っておらずまともに仕事にならないという状況に入社早々陥る羽目になったりする。

アナリストが自分の仕事を円滑にするためにもデータアーキテクトの役割を兼ねることがあるが、人がいなければさらにデータエンジニア、さらにはインフラエンジニアまで広がるかもしれない。

そうなれば分析の仕事など出来るわけもなく、スキルセットも違うので大変な苦労をすることになる。

また、何の制約もなしに全て開放すればいいというわけではないが、制限しすぎれば日常業務にすら著しく支障をきたす。さらに分析の実務を行ったことがない人が決定権を持っていると状況を覆そうにも実務経験が無いゆえに現状の悲惨さが理解できず、結局分析者側が膨大なエネルギーを使うはめになる。

外注に依存していないか

分析に力を入れていると外向けには言っているものの、内情は外注や業務委託に頼り切り、社員はスキルが低く手が出せないでいつのまにかブラックボックス化してますます抜け出せず、それでも新しい人を入れもしなければ人の育成もしない企業では分析者はいくらでも替わりがいるお手伝いであっていなくなっても困らないぐらいの扱いになっていることがある。

そのため社員として入っても総じて分析者の地位は低く、スキルは身につかない上に出世も遅くなる。これもインフラ同様面接の場では実態がわからないので、分析者の地位ついてどう考えているかを聞くのは一つの方法だ。

社員の実務能力を知りたければ、若手の前処理スキルが一つの目安になるのではないか。

中小企業は基本的に避ける方が無難

データサイエンティストやデータアナリストになりたければ中小企業に行く理由はあまりないで大体言い尽くしてはいるが、専門家として活動するなら中小企業へ行くのはお勧めしない。「これから分析に力をいれようと思っている」場合と同様、自分で起業する場合や幹部クラスでの参加でなければメリットはあまりないだろう。

なお、この記事を書いたこ頃はまだデータサイエンティスト・データアナリストなどのデータ分析をする人の整理が自分でもできていなかったこともあり一緒くたになっているが、高度な知識が要求されるデータサイエンティストや大規模データを使うような機械学習エンジニアがこれに該当する。

一方、色々な分野のことに広く関わるデータアナリスト、データを整備するデータアーキテクトであれば活躍する道は作れる可能性はある。ただし「アナリスト」ではない仕事が多いので最初からそれを理解した上で選択するのであれば選択肢は広がるし需要もある。

100%アナリストにこだわると大変

そもそもアナリストの需要が少ないので、100%アナリストとしての活動を行える企業はほとんど見当たらない。したがってマーケターやコンサル、あるいはデータエンジニアや機械学習エンジニアと部分的にでも他の業務と兼任しながらアナリストの活動を広げていく、というのが現実解なのだが、最初から「アナリストだけで行く!」となると選択の幅が著しく狭まって大変だ、ということは知っておこう。

こちらの資料にこのあたりの話はまとめたが、つまりは「今までアナリストがメインの活動をしている人はほとんどおらず、今後もそういった場が増えていく見込みは少ない」ということだ。

アナリストとして生きていく方法はまだ未知の世界

「注意すること」と書いているが、要は「自分が注意しなかったから大失敗した話」のことでもある。少しでもこれからアナリストになろうと考えている人の参考になればということで書いた。

全体像を描くことに主眼を置いているため、当然個々の企業や部署あるいは人の単位においてはここに当てはまらないことは当然起こりえる。しかしそれは世の中全体から見渡せば例外であろう。

転職サイトの情報や転職エージェントはもちろん、企業側でも正確な情報を出してくるとは限らない。というより、当事者含めてよくわからないことだらけだ。

結局のところは自分で調べてなんとかするしかなく、この記事を書いている当人もまだまだ模索している途中であり間違えている可能性も十分にありえるのだが、参考になれば幸いだ。