データサイエンティスト・データアナリストを採用するために求人情報を出す前に考えること

2018年12月4日

データサイエンティスト=スーパーマンはもうやめよう

データサイエンティストは高度な統計学や機械学習を使ってデータ分析をする専門家、という触れ込みだったはずが、最近ではどうやらそれ以外の能力も要求されるらしい。エンジニアリングについては以前から話は出ていたが、今度はマーケティング、コミュニケーション能力、果ては経営者としての視点まで要求される。

しかし、実際にはそのような人材はほとんど存在しないし、いたとしても雇うことなど実質的に無理なので、スーパーマン像を作り上げて過度な期待をするのは止めて、現実的な視点に立って雇う前に考えるべきことをまとめた。

データサイエンティスト・データアナリストを採用するために求人情報を出す前に考えること

最大の要因はデータ分析を使う文化があるかどうか=結局は経営者の問題

どんなに優秀な人を高い報酬で雇ったところで、その企業にデータ分析による意思決定を行う文化が無ければ全ては無駄である。分析に知識も興味もなく、自分で作文するのが当たり前の企業において、客観的な視点でデータを分析し、結果を提示するような人間はむしろ邪魔物扱いされるだけだ。自分が必要とされているかどうかは普段の生活の中ですぐに実感できることであり、必要とされていないとわかれば逃げ出すか、ふてくされて埋もれるか、いずれにしてもそのスキルがその企業で活かされることはないだろう。

そして、データサイエンティストが活躍できるかどうかはこの企業文化が一番の問題となる。いくら専門家がいたところでその他の人にデータ分析を活用する意識が無ければどうすることもできない。この文化は一朝一夕にできるものではなく、変えようとしたところですぐに変わるものではない。

それを変える方法はただ1つ、経営者自身がデータ分析による意思決定を実践し、自ら範を示すことである。これは分析者の提示した結果に必ず従わなければならない、ということは意味しないが、もし他人にはデータ分析を重要視しろと言いつつ、自分はデータ分析を結果を一切無視して独善的に判断するのであれば、それを見た社員は経営者のマネをするか、あるいは言われた通りにしているよう表面を取り繕ったとしても文化として定着することはない。

分析能力よりもビジネス理解とコミュニケーション能力を見る

「ビジネス理解もあって分析もできる人を雇おう」と思うかもしれないが、両方高いレベルでできる人などめったにいるものではない。専門スキルがある人というのは「分析の知識は優れているがビジネスに興味がない人」が多い(これは分析に限らずだが)。そこで分析スキルだけを見てしまい、スキルがあれば何とかなるだとうと雇えば、孤立と衝突を生むことになる。

データ分析力がまだ高くない企業は、最初はビジネス8割、分析2割で見るのがよいだろう。スキルもあまり高度なレベルは必須ではなく、入門書を一通り理解しているレベルでひとまず十分であり、ビジネスにおける実践経験の方が価値が高い。それ以上の知識や経験があったところで企業側が使いこなすことは難しい。

ビジネスと分析の双方に理解があり、さらに組織運営やマネジメントへの視野も持っているのであれば、データ分析組織に必要なのはデータサイエンティストではなくデータ分析プロセスをマネジメントする人なので、分析者として雇うのではなく将来を見越してより高いランクでの職種をオファーするべきだ。そこそこの分析者であれば外注も含めて代替者を探すことは可能だが、データ分析プロセスをマネジメントすることができる人はデータサイエンティスト以上に貴重である。

もちろん、すでにマネジメントできる人がいて専門家をうまく使えるということであればコミュニケーション能力は無視して分析能力だけを見るだけでも問題ないだろうが、それができる企業は数少ないだろうしそもそもこのエントリーなど読む必要がないだろう、ということで考慮していない。

データサイエンティスト・データアナリストに何をさせたいのか

最低限「データ分析をする人」は「アナリスト」と「エンジニア」に分かれ、その違いは「他の誰かが意思決定するための情報(つまりインテリジェンス)」を作るかどうかにあるぐらいの区別はしておいたほうがいい。

実際には100%どちらかではなく、どちらにどれぐらい寄っているかということになるが、いくら「アナリスト」も欲しいといったところで10人もいない企業ではどう考えても「アナリスト」が1割からせいぜい2割で残りは「エンジニア」かマーケターになるだろうし、大半の企業が欲しいと考えている「データ分析をする人」というのは「エンジニア」のことなので、そこに「アナリスト」希望者がやってきてスキルがマッチしたからと雇っても定着しない。

求めるスキルは何をどれぐらいか

データサイエンティストのスキルというと分析手法にばかり焦点が当たるが、データ分析と言っても幅広いので、やりたいことに対してどういったスキルが必要であるかを考えなければならない。具体的には以下のような内容になるだろう。

  • 特定分野での最先端の知見が必要なのか、全般的に知っていれば良いのか
  • 手法を道具として使えれば十分なのか、理論的背景の理解は必要か
  • エンジニアリング能力は、前処理を含めて分析するためのコードが書ければよいか、インフラ構築のための知識が必要か
  • コンサルや営業スキルは独力で仕事を開拓してプロジェクトを回せる能力か、アナリストしてコンサルと組むのか

スキルに見合った仕事は十分にあるのか

いくらさせたいことがあっても現実問題として見合った仕事があるかは別問題。データ分析を始めようと思ってとりあえずデータサイエンティスト・データアナリストを雇ってはみたものの持っている知識が使えるような仕事が無く、仕方なく振った仕事がVBAでのツール作成や分析とは関係ないディレクターなどでは単なる飼い殺しであり、お互いに不幸である。博士を何人も抱えていながらまともに仕事が取れず2年持たずに崩壊した分析チームもあるぐらいで、仕事ではなく先に人を入れようとするとこのようなことが起きる。これは分析者側にも責任はあるが、採用の際に「とりあえず分析ができる人を雇っておけばなんとかなる」と考える企業が悪い。

同じレベルの人は他にいるのか

1人分の仕事しかないから1人雇えば良いと考えるかもしれないが、回りのレベルとあまりにかけ離れたレベルの人を雇ったところでまともに話ができる人がいないのであれば孤立してしまう。同時に2人以上が難しければ、特に人員が拡大できるまでは現状に不満を持っていないか注意を怠らないこと。スキルがあればあるほど転職は簡単なのだから。

また、採用時に現状を正直に伝えておくことも重要だ。いざ実際入社したら「話が違う!」なんてことになったら最初から信用を失い、士気が下がって躓いてしまう。

その人を使いこなせるのか

データサイエンティストを雇えばあとは勝手にやって利益を上げるなどと考えるのは間違いで、生かすも殺すも使う側次第。経営者自身がリテラシーを高めるか、あるいはデータ分析プロセスをマネジメントする人を先に確保するか育ててからでないと、専門家を使いこなすのは難しい。

その人にいくら払うのか

上記の問題がクリアできるして、では雇うとしたらいくら払うのか。高度なスキルを求めるのであれば、それ相応の報酬を出さねばならない。最初に高額を提示することに躊躇があるならば、結果に応じてボーナスを支払うようにしても良いが、納得のいく額を出さなければ離反される。結果を出しているにも関わらず、見合った報酬を出さない企業が多すぎる。

魔法の杖は存在しない

高い報酬も、高度な理論を使う機会も、切磋琢磨できる同僚もいない環境に優秀な人が来るわけがない。もしそれらの機会を提供できたとして優秀な人が獲得できても、それだけで全てが解決して業績が上がるなどということもありえない。

そして、もし環境を整えることもせず雇ってうまく行かなかったとしても、データサイエンティスト・データアナリストの責任ではない。データ分析の失敗の責任は経営者・マネージャーにある。今までデータ分析に基づいた意思決定をしてこなかった上に、丸投げしたら何かいい答えが返ってくると勘違いをし、揚句に失敗したらデータサイエンティスト・データアナリストに責任を押し付けたところで何も解決しない。

まずは経営者側の意識が変わらなければならない。