意思決定と分析のプロセス

意思決定と分析のプロセスの全体像

意思決定と分析のプロセスをデザインする

意思決定と分析のプロセスの全体像を知った上で特定の場所に特化することを選ぶのか、特定の方法しか知らないので選択肢が無いのかではまったく事情がちがう。個別の話題も重要であるが、同時に全体像を知っておいた方が良い。

データを処理する手法やデータ基盤の構築や整備の話から入ってしまうと全体像が見えないかもしれない。高度な数理モデルも機械学習も、大量のデータも使いやすい基盤も全ては意思決定と分析のプロセスを構成する一部である。

意思決定と分析のプロセスは次の8つのフェーズに分けられる。次項で各フェーズを概観する。

  • 目的の決定
  • 要求
  • 収集
  • 処理
  • 洞察
  • 伝達
  • 意思決定と実行
  • フィードバック

意思決定と分析のプロセスの各フェーズの概観

意思決定と分析のプロセスの各フェーズはそれぞれが専門領域となるぐらいに大きな課題となる。今回は全体像を見通すためにごく簡単に紹介する。

各フェーズの最後に関連した記事のリンクを貼っておくのでより詳しく知りたい方はそちらを参照のこと。

目的の決定

意思決定と分析のプロセスの始まりは、意思決定者が「何を知りたいのか」を明確にすることである。目的を定めることなくただ”分析”を始めたところで無駄にしかならない。また目的が明確であっても、その目的そのものが間違えていればどうしようもない。

それがわかればあらゆる問題が解決するような「問い」が見つかれば素晴らしいがそんな簡単にできるはずもない。従って実際にはより具体的な何かしらの「問い」や「課題」を解決するために必要な情報は何か、になることが大半だ。

意思決定と分析のプロセスにおいては全ての始まりである「目的の決定」フェーズが最重要であり最難関であることは間違いない。しかし、完璧な目標などありえない。常に目的を「正しく」持っているかは問い続けなければならない。

要求

「要求」フェーズは意思決定者が分析者に対して「何を知りたいのか」を伝え、分析者が「いつまでに何を提供するか」を答えて双方で合意を取るフェーズだ。詳しく見ると以下のタスクになる。

  • 意思決定者が分析者に「何を知りたいのか」を伝える
  • 分析者は「答えるために必要なこと」を考える
  • 分析者は期間・能力・コストなどの様々な制約下で実現出来ることを考える
  • 内容と納期について双方で合意を取る

意思決定者と分析者が同じ場合はコミュニケーションが無くなる以外は同じで上記の内容を自問自答することになる。

収集

「要求」に基づいて必要なデータを入手する。しかし、必要なデータが必要な時に必要な分だけ集まるということはまず無い。

多すぎ、少なすぎ、欠けている、汚すぎて処理に時間がかかる、手に入れられるが間に合わない、コストがかかりすぎるなど様々な問題が起こり得る。そのため基盤を事前に構築してデータを集約し、使いやすいように整備しておく必要がある。

「収集」フェーズは以下を全て包含している。よく言われるデータマネジメントは以下の4つのタスクの一部に加えてデータガバナンスと情報セキュリティを含む。

最悪の場合、データの取得ができないことが発覚し、要求を満たすことができないことがこの時点でわかることもある。その場合は意思決定者に対して要求を満たせないことを伝え、方法を変えるか、内容そのものを変えるかを検討する。

処理

「収集」したデータを目的に合わせて加工するフェーズ。要求に合った手法を選定し、手法に合わせた加工を行う。加工にはデータに対して数理モデリング、多変量解析、因果推論、KJ法などを適用する本処理とその準備のための前処理がある。

「データ分析」と言うとこのフェーズがことさらに強調されがちで「与えられた(主にデジタルのしかも数値)データをプログラミングで何とかする」と捉える人もいるようだが、それはあまりにせますぎる。よく「分析」として話題に上る様々な手法についての話題は意思決定と分析のプロセスにおける処理フェーズのそのまた一部である。そこで本サイトではこのフェーズを「処理」と呼ぶ。

データ分析に関わっていない人向けにわかりやすさを優先してこの「処理」フェーズと「洞察」フェーズのみを合わせて狭義の意味で「分析」と表現することもある。

洞察

「データ」を「インテリジェンス」にするフェーズ。しかし、「分析」と呼ばれるさまざまな行為が「インテリジェンス」にならずに「データ」に留まっている。なぜならば、予測や推論を行うこととインテリジェンスを作ることは別だからだ。

「意思決定のために必要な情報」とは「特定の意思決定のために洞察して得られた予測や推論」である。つまり予測や推論の中からさらに目的に合わせた形で絞り込み、あるいは他の「データ」と組み合わせてインテリジェンスにする。

「天気予報では雨が降る確率が高いから傘を持って行くべき」という提案が的外れになるのは限られた「データ」から得られる結論を提案しているに過ぎないからだ。

予測や洞察を誤る要因は数多く、常に自らを振り返らなければ大きな間違いを犯すことになる。徹底的に冷静な目で客観的にデータを見ることができるかが最も重要である。自社や自分の利益が絡んで都合の良い解釈をするなら分析者の存在意義を失う。

伝達

洞察で得たインテリジェンスを意思決定者に伝える。口頭なのか資料にまとめるのか、まとめるとしたら簡潔か詳細かなどは受け取る側の好み次第である。

「伝達」フェーズで協調しておくべき点は「分析者の意見や提案を入れ込むことは行ってはいけない」である。分析者はインテリジェンスを提供することが責任である。もし積極的な企画を提案するのであれば分析者ではなく別の役割であり、具体的かつ現実的な案と、結果への責任が伴う。ただし、意見を訪ねられれば答えるのは差支えない。

もう1つ重要な点は「必要な時に届けること」である。より多くのデータを集める、詳細に洞察する、充実した報告書を作成することは大切であるが、意思決定者が必要な時に届いていないのでは元も子もない。

また、分析者は要求の段階で納期を決めたらそれを守らねばならない。間に合わないことが予想される場合は部分的であっても提出するか、早めに納期の変更を行うかの交渉をできる限り早い段階で行わなければならない。

本サイトでは「目的の決定」から「フィードバック」まで含めて1つのプロセスとして扱っているが、要求から伝達までの分析者の領域のみを指して「インテリジェンスサイクル」あるいは「インテリジェンスプロセス」と呼ぶこともある。

意思決定と実行

伝達された分析は意思決定に使われなければ意味がない。かといって、分析結果を全て正しいと受け入れて使わなければならないというわけでもない。情報を無視して失敗した例は古今東西限りなく多いが、盲信することもまた同様に危険である。

また、意思決定しても実行されなければ、やはり無意味である。実行する気がない、あるいはどのような分析が提出されても結論が決まっているようならばこのプロセスそのものが無駄である。分析などせずにさっさとやった方がいい。

「意思決定と実行」フェーズのタスクは以下にわかれる。なお「実行」とは何かの施策を行うことはもちろん「現状維持」という意思決定を実現することでもありうる。

  • 選択肢の検討
  • 意思決定
  • 実行

フィードバック

何が良く、何を改善すべきかを意思決定者から分析者にフィードバックすることで、改善を図る。フィードバックがあれば次回以降の改善に活かすことができる。「出来る限り行う」ではなく「必ず行うことでプロセスの完結とする」とするのが理想だ。

分析者も自らの分析を振り返ることが必要だ。ただし結果が正しかったかどうかを見るのではない。分析を行った時点に立ち戻って「要求を正しく捉えて知るべきことを設定できたか」「データは抜け漏れなく収集できていたか」「処理方法は適切だったか」「洞察に誤りはなかったか」などを検証すべきだ。

意思決定と分析のプロセスの実際

概要を説明するだけでもかなり長くなってしまった。わかりやすく説明するためにモデルを簡略化しているが、実際にはプロセス全体についてもたくさんの観点がある。例えば以下のようなことが挙げられる。

  • 実際にはプロセスの前後を行ったり来たりする
  • 目的無き分析は無駄である
  • データや手法などプロセスの途中から初めても目的を達成することはできない
  • いくつもの収集と処理が同時並行に動く
  • インテリジェンスではなくデータを作る「ミニプロセス」が存在する
  • 定量や定性は扱うデータの種類と処理の手法が違うだけ

「データ分析」は何を指しているのか

「データ分析」はこのサイトにおいては「要求」フェーズから「伝達」フェーズまでの分析者の担当部分を指している。例外として、データ分析に関わっていない人向けにわかりやすく「処理」と「洞察」の2フェーズのみを指して使うこともある。

「データ分析」とはよく聞くが、その言葉の意味は人によって違う。多く見かけるのは「目的の決定」から「伝達」までと、「処理」だけのパターンだろう。正式な定義があるわけではないのでどれが正解で不正解かという問いには意味が無い。しかし、毎回「どういう意味で言っているのだろう」と確認するのも大変なので、どのあたりの意味で話をしているのかを先に明示してもらえるとありがたい。

データ分析の世界は果てしない

今回は全体像を紹介したがこれはほんの触りにすぎない。実際に関わっている人はわかるだろうが、データ分析(前述のとおり「要求」フェーズから「伝達」フェーズ)だけに絞ってもどのフェーズもそれぞれがとんでもなく広く深い領域である。ましてや問いを立てたり企画をして実行することも含めたらたった1つの課題に対してでも膨大な量になる。

さらに市場・顧客・競合・政治・経済などあらゆる分野が対象になりえるし、業種業態ごとに内容が違う。また、プロセス以外にも法律・倫理・組織・文化・評価・キャリア・テクノロジー・情報セキュリティと考えなければいけないことは山ほどある。

これだけ広い領域にも関わらず、ごく部分的にしか取り組みが追い付いていない。要因は様々あるだろうが、今回の話のような全体像が見えづらい面はあるかと思われるのでまとめてみた。

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「データ分析」とはつまりは「データ」を「インテリジェンス」にすることである。単に「データ」を作ることに留まっていることも多いため違いをまとめた。

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